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2022年度 東北大学優秀女性研究者賞「紫千代萩賞」受賞者コラム

川西 咲子[多元物質科学研究所 講師]※役職・所属等は2023年3月時点のもの

大阪府出身。大阪大学工学部卒業、同大学院工学研究科博士前期課程修了。JFEスチール㈱での1年の勤務の後、東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻博士後期課程修了。東京大学生産技術研究所 日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015年12月より東北大学多元物質科学研究所 材料分離プロセス研究分野 助教、2023年3月 講師。2023年4月より京都大学大学院エネルギー科学研究科 准教授。工学博士。

・東北大学 プロミネントリサーチフェロー(2022年2月~2023年3月)
・National Renewable Energy Laboratory (USA) Visiting assistant professor(2019年5月~2022年3月)


紫千代萩賞を受賞してのご感想をお願いします。

栄えある「紫千代萩賞」をいただき、素直に嬉しく、そして非常に光栄に感じています。時に厳しく、時にあたたかく、研究を後押ししてくださった皆様に心より感謝しています。紫千代萩賞には「千代*にも続く知と創造をもたらす」との願いが込められているそうです。この有難いメッセージに恥じぬよう、私が専門とする「高温材料プロセス研究」を通じて、千代にも続く日本の未来の創造に貢献したいです。
*千代(せんだい):仙台の旧表記であり長い年月の意味ももつ言葉。

先生のモットーは?

「後は野となれ山となれ」:無責任になれと言う意味ではありません。その時その時に、出来る限りのことを精いっぱいやろう、出てくる結果は自分の力ではどうにもならず神のみぞ知ることなので、「野となれ山となれ」という気持ちに切り替えよう、ということです。

今後の抱負をお聞かせください。

紫千代萩賞の受賞のきっかけとなった「化合物半導体材料の高温溶液成長の研究」をさらに拡げていきます。結晶成長の基礎研究から、SDGsに貢献する次世代材料の開発まで、材料研究者として世界をリードできるよう、様々な研究にチャレンジしたいです。考えるとワクワクするのですが、私が研究の軸にしている「その場観察」を画像解析の最新手法と組み合わせるなど、とっておきの新しい挑戦も計画しています。

最後に後輩達に向けたアドバイスやメッセージをお願いします。

「いっぱい失敗をしたらいいと思います」:私自身、たくさん失敗してきました。学生の頃、共同研究先から20枚ほど提供して頂いた高価な単結晶の基板を、破損したこともあります。簡易密閉された包装のまま真空の保管庫に入れて帰宅したら、次の日の朝全部バリバリに割れていました。当時の指導教員は、怒りを通り越していたんでしょうね、茫然と立ち尽くしていたのを今でも鮮明に覚えています。転んでもただでは起きない性格なので、破片を集めて予定よりも回数を増やして実験することができたのですが、どう考えても大失敗でしたね。
学生と話していると、先生という名前が付いただけで偉い人のように思われることがあるのですが、今に至るまでたくさん失敗してきました。失敗を乗り越えて次に活かして欲しいです。


[研究内容紹介]
金属や半導体などの材料を作るプロセスでは、1,000度を越える高温でさまざまな反応が起きます。「百聞は一見に如かず」と言うように、プロセスの制御を実現するには、たとえ高温であっても何事も見てみることが一番だと信じています。そこで私は、高温での固体―液体間の界面反応を、自作したオリジナルの光学顕微鏡を使って「その場観察」しています。ミクロンオーダーのスケールでどんな反応が起きているのかも、直接観察をすれば一目瞭然です。半導体材料であるシリコンカーバイドの結晶成長、銅製錬プロセスでのガス発生反応など、その場観察でたくさんの高温現象を明らかにしてきました。現象を知り、それを制御する方法を提案することで、材料を作るプロセスの高効率化や材料の高品質化を追求しています。

[研究キーワード]高温物理化学、凝固・結晶成長、熱力学、その場観察

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