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2022年度 東北大学優秀女性研究者賞「紫千代萩賞」受賞者コラム

西村 直子[文学研究科 准教授]
宮城県第一女子高等学校卒業
宮城教育大学教育学部 B類中学校教員養成課程(国語)卒業
東北大学大学院文学研究科博士課程前期 2年の課程修了
東北大学大学院文学研究科博士課程後期 3年の課程修了
2003-2006年 東北大学大学院文学研究科助手
2006-2019年 東北大学非常勤講師(2015年 9月-2016年 3月を除く)
2019年-現在 東北大学大学院文学研究科准教授


紫千代萩賞を受賞してのご感想をお願いします。

審査に当たられた先生方,そして,直接にも間接的にもご指導とご助言を賜りました文学研究科の先生方並びに職員の皆様に,厚く御礼申し上げます。古代インド祭式文献の研究は大変地味なものですが,私たちが歴史というものにアクセスできるのは,世代を継いで蓄積されてきた,ひとつひとつは地味に見えるかもしれない営為のおかげです。このような研究は,本学で育まれてきた豊かな土壌がなければ継続することはできませんでした。その土壌を,更に豊かなものとして次の世代にバトンタッチできるよう,一層励んで参ります。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

先生のモットーは?

「60%全力」「神がしんでもマイペース」

今後の抱負をお聞かせください。

古代インド祭式文献の研究は,多くの世代に亘って受け継がれ蓄積されてきた知見の上に成り立っています。世代を超え国境も越えた,究極の「チームワーク」と言えるかもしれません。そういう「チームワーク」は,古代インドの研究に限らず到る所に見つけることができますが,現代は受け継いでいくのが難しい時代だと感じてもいます。私が受け継いだものをより磨き上げ,これを渡すことのできる相手を育て,しっかりと渡すことが人生最大の目標です。

最後に後輩達に向けたアドバイスやメッセージをお願いします。

よく眠れていますか。今日は何を食べましたか。どんな世界に生きていますか。同じ時代を生きていても,世代に応じて世界の見え方は異なると思います。私たちが経験している豊かさも貧しさも,ある日突然降って湧いたものではありません。そして,何十年も何百年もの長い時間をかけて,やっと解決が見えてくるような問題もあります。本当は,女性限定の賞など必要のない世界になってほしいと,私は思っています。それがどんな世界で,どうすれば実現するのか,考え続けています。長い道のりです。焦らず,深呼吸をしましょう。眠りましょう。食べましょう。笑いましょう。その中で苦しみながらも積み上げたものが,いつか思いもよらない景色を見せてくれることを,私は知っています。


[研究内容紹介]
神様と人間に上下関係があると思い込んでいませんか?両者が対等な関係を結んでいる宗教もあります。古代インドのヴェーダの宗教(婆羅門教)です。「インド学」は,インドの古代・中世の文献研究を中心とする分野です。その中で,私はインド・ヨーロッパ語族に属するアーリヤ人の宗教文献群「ヴェーダ」を研究しています。アーリヤ人は黒海,カスピ海沿岸のステップ地帯から東に進み,紀元前 1500 年頃インド亜大陸に進入したと考えられる人々です。主な文献の編集年代は紀元前 1200 年頃-同 5 世紀頃に位置します。彼らの言語「サンスクリット語(より厳密には古インド・アーリヤ語)」は,現代のヨーロッパやイラン,中央アジアの諸言語と共通の祖先(祖語)に遡り,ヴェーダは人類史を俯瞰する際に出発点となる情報に富む文献という側面を持ちます。インドの歴史はもちろん,世界各地に通じるドアは,インドの文献研究によっても開かれています。

[研究キーワード]古代インド,ヴェーダ,アーリヤ人,輪廻と業

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