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2023年度 東北大学優秀女性研究者賞「紫千代萩賞」受賞者コラム

大澤 絢子[国際文化研究科 特任研究員/日本学術振興会 特別研究員(PD)]

茨城県立日立北高等学校 卒業
お茶の水女子大学文教育学部人間社会科学科社会学コース 卒業
東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻修士課程 修了
東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻博士課程 修了 博士(学術)
2016年-2017年 龍谷大学世界仏教文化研究センターリサーチ・アシスタント
2018年-2018年 龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員
2019年-2020年 大谷大学真宗総合研究所PD研究員
2021年-2023年 日本学術振興会特別研究員(PD)
2023年-2023年 東北大学大学院国際文化研究科特任研究員
2024年-現在 東北大学DEI推進センター助教/国際文化研究科日本宗教・思想史研究講座(兼務)


紫千代萩賞を受賞してのご感想をお願いします。

審査員の先生方をはじめ、日頃より温かな励ましやご助言をくださる先生方、職員の皆さまに、心から感謝申し上げます。近現代を生きる人々の自己向上(修養)の歴史と実態解明にあたっては、広く社会に浸透してきた価値観や想像力に対する柔軟な研究姿勢が求められます。本学は、そのスキルを鍛えて成果を形としていくだけでなく、国際的・学際的な視点から、人間の多様な精神性の探究に取り組むことのできる恵まれた環境であり、大変ありがたく思っております。人文系研究者として将来に不安を抱えていたなか、「研究を続けても良い」と言ってもらえた気がしました。この受賞を励みに、今後さらに研究活動に邁進し、その成果を社会に発信していけるよう努めてまいります。

先生のモットーは?

「締め切りは守る」

今後の抱負をお聞かせください。

私が本賞をいただくことができたのは、努力することのできる場に恵まれ、私なりの努力を認めてくださった方々がいたからです。自分の世界は、自分だけで成り立っているわけではません。これまで、さまざまな人や知に救われ、研究者としての歩を進めることができました。今後も社会や他領域との繋がりを意識し、本を読み、資料に向き合い、人と出会いながら、研究に取り組んでいきたいと思います。卒業後、様々なライフイベントを経験していく学生さん対しては、良き相談相手でありつつ、研究へ真摯に向き合う姿勢を自ら示すことで、学ぶ楽しさとその意義を伝えていけるよう努めてまいります。

最後に後輩達に向けたアドバイスやメッセージをお願いします。

修養が重視するのは、自助努力であり自己実現です。そこには楽しさや満足感、達成感もあるでしょう。しかし、努力と結果が過剰に結びつけられてしまえば、「成功できないのは、本人の努力が足りないから」という短絡的な思考に陥りかねません。努力しても結果に繋がらなかったり、自助できる環境になかったりといった、一人ひとりが抱える困難さは、外からは見えません。SNSなどで溢れる自分磨きや理想像を追い求め、疲弊してしまうこともあるでしょう。結果だけでなくその背後にも光を当てられる心、時には運に任せる柔らかい心を持ちながら、自分を磨り減らすことなく日々を過ごしてもらえたらと思います(私もそうありたいです)。


[研究内容紹介]
「自己とは何か」、「いかに生きるべきか」といった問いは、時代や地域、性別、宗教を問わず人間の持つ根源的課題と言えるでしょう。日本において、そのような問いは主として、宗教や哲学、道徳、学問、文学などを通して追究されてきました。自己をめぐる問いとして私が研究しているのが、「自分をいかに磨き、高めるか」というself-cultivation=修養の問題です。日本では明治以降、西洋との関わりを通して修養という考え方が浸透し、人々は模範的とされる人物の生き方を真似、人格向上に努めてきました。では、どんな人物が理想とされ、その人物像はいかに形成されてきたのか、男性と女性はそれぞれどんな「自己」を目指し、それは現代とどう関わるのか。修養の男性性/女性性が今の研究テーマです。

[研究キーワード]修養・教養・ジェンダー・自分磨き・近代仏教

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