林 久美子 [工学研究科 准教授]
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士後期課程 修了 博士(学術)
紫千代萩賞を受賞してのご感想をお願いします。
2010年11月に東北大学に助教として着任し、10年が経過しました。10年間お世話になった佐々木一夫教授が本年度で退職するため、佐々木教授に賞の推薦者になっていただける最後の年でした。佐々木教授をはじめとし、工学研究科長や応用物理学専攻の先生方、そして家族も紫千代萩賞の受賞をとても喜んでくれて、良かったと思っています。
先生のモットーは?
ファーストかコレスポで、必ず最低年1本の論文を出す。
今後の抱負をお聞かせください。
疾患メカニズム解明という医学分野に対して、物理学で挑戦します。前人未踏なので、測定手法や理論に批判も多く、時々心が萎えますが、まだまだ頑張りたいです。
最後に後輩達に向けたアドバイスやメッセージをお願いします。
音楽は興味が薄くほとんど聞かないので、歌というより強い生き方に憧れるという意味ですが、同世代の安室奈美恵さんのファンだったかもしれません(今思い返すと…)。「いつの日かI’ll be there」、「夢見た未来と違う現在に立ち止まるけど」、「例え迷っても振り向かずに選んだ道を」などの歌詞に、自分の信念と世間の常識とのギャップで研究が辛くて時に泣きながら歩んできた道を支えてもらったと思います。私はそれでも世間の常識とか周りの考えに流されなくて良かったと思えるので、若い皆さんも自分の信念にしがみついて頑張ってください。
[研究内容紹介]非平衡物理学は、特に電流(電子の流れ)、熱伝導(熱の流れ)や拡散現象(粒子の流れ)など流れがある輸送現象を対象にします。流れがある状態を非平衡状態といいます。これまで無生物に応用されてきた非平衡物理学を、生体内の輸送現象である神経細胞軸索輸送に応用しました。神経細胞は長いもので1mもある軸索を持ち、軸索内をシナプスの材料が輸送されています。生物であっても同じく輸送現象なので、物理学が応用できるのではないかと考えました。輸送が滞れば病気になります。神経細胞軸索輸送の障害はアルツハイマー病、パーキンソン病などの神経疾患と関連します。物理学を医学(神経疾患のメカニズム解明)に役立てたいです。
[研究キーワード]非平衡物理学、輸送現象、神経細胞軸索輸送、アルツハイマー病、パーキンソン病、医工学