鈴木 杏奈[流体科学研究所 准教授]
宮城県立第一女子高等学校 卒業
東北大学工学部機械知能・航空工学科 卒業
東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻博士前期課程 修了
東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻博士後期課程 修了 博士(学術)
2016年-現在 流体科学研究所
紫千代萩賞を受賞してのご感想をお願いします。

対話設計の研究は、自分らしさが宿っていると感じている研究です。最近になってようやく論文として形になり、競争的資金も獲得できるようになってきましたが、7年ほど前、地域活動から始め、研究テーマもシーズも手探りで開拓してきたもので、ここに来るまで遠回りもたくさんしました。これまでの地熱研究の蓄積に加え、そこへの挑戦が今回の受賞につながったと感じています。あたたかく見守り、サポートしてくださったメンターの先生、流体研・大学の先生方、そして一緒に研究を進めてきた学生や共同研究者、関係者の皆様のおかげで、幅のある研究ができるようになり、感謝の気持ちでいっぱいです。
先生のモットーは?
ワクワクしないのなら、自らみんなをワクワクさせる。
今後の抱負をお聞かせください。
地熱の自然科学分野から対話設計の人文社会学分野へと踏み出せているのには、AIが大きな助っ人となっています。AIの発展によってアカデミアの価値が揺らぎつつある時代ですが、異分野への挑戦はずっと容易になりました。専門の外に踏み出すハードルが下がった今だからこそ、分野にこだわらず、自分や学生の中に生まれる問いや違和感を大切にし、そして、その問いに対する自分たちなりの信念を、論文という批判可能な形で世に提示していきたいと思います。また、違和感で終わらせず、ワクワクする未来をつくることも続けていきたいと思います。ワクワクという感覚は、不確実性があるからこそ生まれると思っています。地下流体の研究で培ってきた不確実性との向き合い方と、ワクワクという感覚は、実は同じ構造をしているのかもしれません。数理科学を使いながらワクワクも掘り下げていくことも、これからの自分たちのテーマにしています。


最後に後輩達に向けたアドバイスやメッセージをお願いします。

博士課程の頃、地熱の数理モデルを研究していましたが、数学が十分にわかっているとは言えませんでした。それでも、自分の研究なのだから自分が一番わかっていないといけないと肩肘張っていました。ポスドクで東大の数理科学研究科に移ったとき、「この人たちより理解できるわけがない」と開き直って、わからないことを正直に相談しました。すごく楽になって、そこから新しい研究に発展しました。
わからないと言っていいんです。わかっているふりをしている間は、助けてもらう隙がない。わからないと言えることによって、人が手を差し伸べてくれて、自分一人では行けなかった場所に連れて行ってもらえます。わからないを認め、周りを巻き込んでいきましょう。そしてその先の新たなワクワクを感じましょう!
[研究内容紹介]
地下に広がる岩の割れ目の中を熱水がどう動くかを理解し、地熱発電や温泉管理に役立てる研究をしています。地下の構造は直接見ることができません。その「わからなさ」を消すのではなく、「わからなさ」を明示しながら設計する方法を考えてきました。具体的には、複雑な構造の本質的な特徴をトポロジカルデータ解析で抽出し、その情報をもとに流動の予測と意思決定を行う理論を構築しています。3Dプリンタ製の岩石実験や、実際の地熱フィールドのデータを使った検証も行っており、理論と現場をつなぐことを大切にしています。近年は、多様なステークホルダーが地熱資源の利用の未来を一緒に考えるための対話設計にも取り組んでいます。
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[研究キーワード]地熱資源工学、流体流動、トポロジカルデータ解析、不確実性定量化、地域共創
