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平成29年度 東北大学優秀女性研究者賞「紫千代萩賞」受賞者コラム


有澤 美枝子 [薬学研究科 准教授]
山形県立山形西高等学校 卒業、東北大学理学部化学科 卒業、東北大学大学院理学研究科化学専攻博士前期課程 修了、東北大学 博士(薬学)2001年取得、1998年-現在 薬学研究科


紫千代萩賞を受賞してのご感想をお願いします。

この度は、第1回東北大学優秀女性研究者賞“紫千代萩賞”を受賞することができ大変光栄です。私は、東北大学大学院理学研究科で現在の上司である山口雅彦教授に研究指導を受け、0を1にかえる新反応開発の重要性を教わりました。また、薬学研究科では、研究活動と同時に結婚出産を経験し、研究と育児の両立は重要な課題になりました。一人目を出産した頃に東北大学で女性研究者への支援がスタートし、完成したばかりの学内保育園に生後二ヶ月で長男を預け仕事復帰を果たしました。その後、東北大学の多様な男女共同参画推進支援は、私の研究継続ための重要な支えとなっており、大変感謝しております。今回の紫千代萩賞受賞が次の研究展開への原動力となり、未来の私が一歩進み優れた研究成果を創出できるように、日々自身の研究に真摯に取組む所存です。この度の受賞は、東北大学・薬学研究科・共同研究者・家族全ての支えのもとに実現できたもので、ここに心より感謝致します。

先生のモットーは?

継続は力なり・嚶鳴

今後の抱負をお聞かせください。

新しい有機化合物が毎年数十万個以上新たに化学合成されていますが、ほとんどの場合に既存の分子骨格に新しい置換基を結合した化合物であり、本質的に新しい分子骨格の有機化合物は限られます。私の研究は従来知られていなかった斬新な化学反応を開発することによって、本質的に新規な分子骨格を有する有機ヘテロ元素化合物を開発して、特徴的な現象と機能を開発する内容です。本研究によって、新しい構造の多様な含ヘテロ元素生物活性化合物群を合成して、創薬研究に貢献したいと考えています。
また、資源とエネルギー問題の観点から、過剰なエネルギーを用いない平衡反応の利用・ヘテロ元素単体の直接利用によって、多様な新規有用有機化合物を効率的に生産する理想的な反応系を構築したいと考えています。加えて、本触媒法は水中均一系でタンパク質の化学修飾法に適用できるので、新しい生物活性生体分子の開発や低分子医薬品を結合した抗体薬物複合体の創生を行いたいとも考えています。(右写真:研究室のメンバーとともに)

最後に後輩達に向けたアドバイスやメッセージをお願いします。

研究が面白くて寝る暇も惜しい感覚をもって実験に取組んだ経験があることが、私の宝です。発見の瞬間のワクワクがあるから、面白く虜になるのです。現在は、同室の学生さんの成果に一喜一憂できることに感謝して研究を継続しています。研究成果と真摯に向き合い、できる限り多くの成功体験を積むことは大切です。
また、薬学研究科では、女性教員の活躍の場として創薬マインドを持った女性教員のみからなる女性機能有機分子創生チーム「ORCHID」を創設し、女性の視点から創薬に関する共同研究を行っています。女性は、多様なライフイベントに応じて研究に取組む時間や成果に波ができますが、自身の研究と並行して創薬共同研究を実施することで、皆で協力して継続的な成果の創出と高いモチベーションを維持できるとよいです。女性研究者の研究継続の一助として、こうした研究ネットワーク形成は重要であると感じています。(左写真:「ORCHID」メンバーとともに/「ORCHID」ロゴマーク)


[研究内容紹介]
私は、新規な有機ヘテロ元素化合物の遷移金属触媒合成と機能の研究を行っています。有機ヘテロ元素化合物は医薬品や機能性材料として広く利用されています。ヘテロ元素は周期表で第15-17族に属しており、特に酸素、窒素、フッ素、イオウ、リンなどのヘテロ元素を適切に配置することは、これらの機能の発現と調節のために必須です。その為、炭素原子とヘテロ原子を結合する有機合成技術とヘテロ元素資源の有効活用技術は重要です。しかし、その合成には、一般に古典的な方法が用いられており、多段階合成や省エネルギー・資源浪費等の問題があります。
私は、有機へテロ元素化合物の合成に不向きとされてきた遷移金属触媒を活用して、有機へテロ元素化合物の新しい環境調和高効率合成法の開発を行なっています。新しい合成法の開発は、これまでに知られていない新規骨格を有する有機ヘテロ元素化合物群の合成を可能にし、新薬や機能性材料の創生に直結するために重要であると考えています。
[研究キーワード]
遷移金属触媒反応の開発・生物活性を有する新規な有機ヘテロ元素化合物の合成・未利用資源の直接利用法の開発・生体分子の触媒的化学修飾法の開発

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