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平成29年度 東北大学優秀女性研究者賞「紫千代萩賞」受賞者コラム

梅津 理恵 [金属材料研究所 新素材共同研究開発センター 准教授]
宮城県立第二女子高等学校卒業、奈良女子大学理学部物理学科 卒業、奈良女子大学大学院 理学研究科 物理学専攻 博士前期課程修了、東北大学大学院 工学研究科 材料物性学専攻 博士後期課程修了 博士(工学)、2010年-現在 東北大学金属材料研究所


紫千代萩賞を受賞してのご感想をお願いします。

記念すべき第一回「紫千代萩賞(理学・工学分野)」を受賞したこと、非常に光栄に思います。本賞の趣旨は「優れた研究を展開する女性研究者に対しその活躍を讃えることで、研究意欲の一層の増進に繋げ、世界トップリーダーとなるような女性研究者の育成を目的とします」とあります。折しも、私の研究分野は、東北大学が掲げる4つの世界トップレベル研究拠点のうちの「材料科学」と「スピントロニクス」の両方に関わる内容であり、指定国立大学法人に指定された同じ年度に受賞したことは、機運を感じずにはいられません。「研究意欲を増進し」、受賞者としてその名に恥じぬよう一層精進して研究を進めて参りたいと決意する次第です。これまで、多くの方々に支えて頂きましたこと、この場を借りて御礼申し上げます。

先生のモットーは?

「今日でしか出来ないことは、今日やる」。逆に言えば、「今日でなくてもいいことは、今日でない日に、、?」。学位を取得して研究者としてこれから、という時期に出産&育児休養を3度繰り返し、綱渡りのような日々でした。「優先順位をつけて、うまくやっていこう」と当時の上司に励まされて?いました。これらの言葉をいつも心に唱えています。

今後の抱負をお聞かせください。

研究においての当面の目標は、「磁場中共鳴非弾性X線散乱」という測定が、機能性磁気材料の電子状態観測のために非常に有用な手段であることを世に示すことです。「ハーフメタル」という特殊な電子状態を有する物質が、本当に理論で予測されるような電子状態を有しているのか、そして、実験的にどのように検証すればよいのか長い間悩んでおりました。たくさんの方と議論をし、色々な方の協力があって、ある一つの手法に出会い、手応えを得つつあるところです。良質な試料を育成し、お力添え頂いた皆さんに恩返しが出来るよう、良い研究成果を発信していきたいと思います。
私生活においては、反抗期真っ盛り、もしくはこれから迎えつつある3人の子供たちとの距離を上手に保ち、それぞれの成長を楽しむ余裕を持つことです。

最後に後輩達に向けたアドバイスやメッセージをお願いします。

自分の将来に向けて、どんなふうになっていきたいのか、たくさんの夢を描いて欲張ってください。どれもかれも全てが実現するわけではないのでしょうが、何かをうまく進めるために別な何かを諦める必要はなく、貪欲に進めていって欲しいと思います。あと、自分が関係する組織の中で、将来トップになることを早いうちからイメージして欲しいです。私のような世代には、その意識が少ない様に思えるからです。研究者として生き残り、研究を継続することを目標としてきたことを反省しています。色々な組織の中で、女性リーダーがどんどん輩出されることを大いに期待しています。


[研究内容紹介]
Mn, Fe, Co, Niなどの3d遷移金属が主役を担う金属磁性材料の基礎研究を行っています。高スピン偏極材料、磁性形状記憶合金、希土類代替磁石材、磁気冷凍作業物質、振動発電素子用磁歪材料など、様々な機能の発現機構を電子状態と関連付けて解明し、新規機能性磁気材料の開発や材料を設計することを研究の目的としています。自分が設計した物質を実際に作製し、研究室で温度・磁場・圧力などの外場を変化させて、結晶構造・磁気・熱的性質・伝導特性などの諸物性を測定しています。最近は、ホイスラー合金と呼ばれる物質の単結晶試料を作製し、日本が世界に誇る大型放射光施設(SPring-8)で共鳴非弾性X線散乱実験をし、物質の電子状態の観測を行っています。
[研究キーワード]
磁気物性、機能性磁気材料、スピントロニクス、永久磁石、形状記憶合金、磁気熱量効果、磁気抵抗効果

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